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2010年11月23日火曜日

TPP参加の意義と参加の備え


初めて国会の場に出てきたTPP(環太平洋パートナーシップ協定)の言葉は、あまりにも唐突でした。私なんぞは聞いたこともなかったので「また覚えること増えたぞ……」などと迷惑な気分でした。

「第176回国会における菅内閣総理大臣所信表明演説」より抜粋
政府官邸ホームページより H22.10.1
http://www.kantei.go.jp/jp/kan/statement/201010/01syosin.html

(東アジア地域の安定と繁栄に向けて)
この秋は、我が国において、重要な国際会議が開催されます。生物多様性条約に関するCOP10では、議長国としての重要な役割を果たします。また、私が議長を務めるAPEC首脳会議では、米国、韓国、中国、ASEAN、豪州、ロシア等のアジア太平洋諸国と成長と繁栄を共有する環境を整備します。架け橋として、EPA・FTAが重要です。その一環として、環太平洋パートナーシップ協定交渉等への参加を検討し、アジア太平洋自由貿易圏の構築を目指します。東アジア共同体構想の実現を見据え、国を開き、具体的な交渉を一歩でも進めたいと思います。

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抜粋終了


TPPの議論を深める前に、日本の農業がどのようなものかについて触れなければなりません。
(と言ってもそう深い知見があるわけでもありませんが)


日本の土地は北から南まで、山が連なっている部分ばかりです。
と言うと少し大げさですか?

さらに、小作農が中心で農民の人口が多く、一軒あたりの作付面積も猫の額のように小さくなっています。
日本の農業は――他国と比べて相対的に――作業効率が悪いのです。

また日本は現在先進国であり、為替だかレートだかのせいで――やはり他国と比べて相対的に――人件費が高い。

これに追い討ちをかけるのが、猫の目農政と言われる朝令暮改の農業政策です(またネコか……)。
農家は長期的な計画を立てるのが難しく、行き当たりばったりの農作業をしいられてきました。

日本の農業は政府の手厚い援助で過保護に育った一方で、計画的な成長という視点はまるでありませんでした。
後継者問題もその延長線上にある難題でしょう。

効率が悪い。高い。無計画。成長性がない。
「TPPで他国の農産物が入ってきたら大打撃」と農業者(林業者もだけど)が口をそろえて言うのは、取りも直さず「これからも農業は古いまま変わらない、変わろうとしない」ことを示していると思います。
(「変わる余地がない」と言う可能性もあることにはある)

個別所得保障制度という糸を垂らし、TPPで足場を切り崩す。
政府がそんなマッチポンプをやろうとしていることに気づかなければ、農業はいつまでたっても旧態依然としたまま、政府の補助金漬けで生かさず殺さず貴重な票田として利用され続けるのでしょうね。


次に農業とは別の分野に目を向けてみましょう。

TPPで流動的になるのは、生産物だけではありません。
人材――とりわけ労働者も流動的になることは重要な論点です。

さて、確かに介護の業界はもうずっと「人材不足」の状態が続いています。
だからと言ってEPAやその他協定で外国人労働者を取り込もうとする動きは「超就職氷河期」の今となっては早計ではないでしょうか。

フィリピン人介護士は、日本とフィリピンのEPAによって「来日後、数年内に介護士の資格を取得すること」を条件に日本への滞在を認められているのですが、反面で数年内に資格取得ができない場合には帰国することも定められていたかと思います。これは介護以外の仕事に従事できないよう(国内の雇用が損なわれないよう)にするためのものです。

フィリピン大統領は日本に来日した際にこれらの条件の緩和を要請しました。

これは当然断るべきだと思います――日本語できない人がお年寄りのめんどうだなんてとんでもない! そんでなくてもお年寄りとは意思の疎通が難しいのに――が、ここでそれよりももっと強力に人材の流動性を高めるTPPへ日本が参加するとはどう言った結果をもたらすものか。

国内の雇用は失われ、日本は「外需依存」から「外需頼み」になってしまいます。
では政府与党はどのようにすべきでしょうか。

私はあえて、TPP参加へ舵を取るべきだと思います。

菅内閣の所信表明演説に突如として「TPP」の言葉が出てきたのには、経済産業省や外務省の官僚からの挿入だったのではないか、との話が新聞でありました。

確かにTPPへの参加は、道を踏み誤らなければ輸出大国である日本の経済に大きく貢献するでしょう。
とりわけ「ものづくりの国」である日本の工業製品・家電製品の製造販売業者にとって、他国と水をあけられた世界市場での進出競争にいくらかでも追いつく契機となるでしょう(かつての地位を取り戻すのは難しい、という事実も受け止めなければならない)。

ならばこそ、この日本の将来を大きく変える岐路にあることを十分に知らしめ、全ての関係者の意見を丁寧にくみ上げ、忌憚のない議論を重ねていくべきではないかと考えます。

政府与党は国内世論を早急に取りまとめ、新たな成長戦略の主軸とするべく継続的で成長性のある国家戦略――百年先を見据えた国家大計を描くことが、閉塞間の漂う日本に必要な起爆剤になるのではないでしょうか。

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